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ANZBMS 2016 レポート
齋藤 暁子(東京歯科大学生化学講座)

齋藤 暁子

紹介演題 [1]
Protease-activated receptor-2 exacerbates bone and muscle pathology in a mouse model of Duchenne muscular dystrophy

キーワード

骨粗鬆症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)

研究グループ

Melbourne大学、Eleanor J Mackie先生ら

彼らは、PAR2-mull mdxマウスを使用して、骨粗鬆症と関連があるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に関連した筋肉および骨病変におけるPAR2の役割について検討し、PAR2活性化がジストロフィン欠損マウスの筋肉炎症に寄与すること、また関連する骨病変は、筋肉炎症によって部分的に引き起こされる可能性を示しました。

サマリー

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は骨粗鬆症に関連し、ジストロフィー(ジストロフィン欠損)のmdxマウスは、石灰化の減少および骨吸収の上昇に特徴づけられる骨量減少を示します。そこでPAR2-null mdxマウスを使用して、DMDに関連した筋肉および骨病変におけるGタンパク質共役受容体、protease-activated receptor-2(PAR2)の役割について検討しました。PAR2-null-mdxマウスおよび同腹仔のmdxマウスの四肢、横隔膜筋、脛骨および血清について、筋肉の病態が開始される4週目から、4週ごとに20週齢まで調べました。組織学的検討により、8週以降、活動性炎症領域、損傷線維数はmdxマウスと比較して、PAR2-null-mdxマウスで減少していましたが、一方で、肥満細胞数は2.8倍も上昇していました。横隔膜中のヒドロキシプロリン含有量(線維化の指標)が12週以降PAR2-null-mdxマウスで低下、また8週以降、PAR2-null-mdxマウスで有意に高いグリップ力と低い易疲労性を示しました。20週の大腿骨骨幹端のマイクロCT評価ではBV / TV、小柱数および小柱の厚さがより高い(それぞれ80%、23%、23%)ことを示し、小柱分離はPAR2-null-mdxマウスで14%低下していました。また、IL6、活性型TGFβ、RANKLの血清中濃度およびRANKL / OPG比は20週齢PAR2-null-mdxマウスでmdxマウスと比較し、それぞれ88%、19%、37%、49%低下していました。これらの結果は、PAR2活性化がジストロフィン欠損マウスにおける筋肉炎症に寄与することを示し、関連する骨病変は、少なくとも部分的には筋肉炎症によって引き起こされることを示しました。そしてPAR2アンタゴニストは、グルココルチコイドの骨への有害な影響なしにジストロフィン欠損の影響を改善させる可能性があることを示唆します。

紹介演題 [2]
The loss of ephrinB1 in osteogenic progenitor cells hinders endochondral ossification

キーワード

ephrin/Eph受容体、骨形成

研究グループ

Adelaide大学、Stan Gronthos先生ら

彼らは、Osx:CreによるephrinB1欠損マウスにおける骨格形成および成熟時のephrinB1の機能的役割を解析し、ephrinB1によるEphB正方向性シグナルの活性化が破骨細胞機能を阻害し、逆方向性シグナルを通して成長板および石灰化物形成を促進することを示しました。

サマリー

EphB受容体チロシンキナーゼファミリーとそのephrinBリガンドは、主に骨格形成と骨の恒常性におけるメディエーターとして認識されています。ヒトにおけるephrinB1変異は前頭鼻異形成および冠状頭蓋骨癒合症を引き起すことが知られています。本研究は、Osx:CreによるephrinB1欠損マウスを用いて骨格形成および成熟時のephrinB1の機能的役割を同定することを目的とします。結果として、Osx:EfnB1-/-の新生仔ではコントロールと比較し骨形成の増加を認めましたが、一方で、Osx:EfnB1-/-の4週齢マウスでは硬い骨が減少しより脆弱性を示し、海綿骨の形成と構造物の減少および皮質骨の減少を伴っていました。これらの結果はOsx:EfnB1-/-マウスでのTRAP陽性破骨細胞の増加および骨芽細胞の減少という結果と相関性を示し、さらにOsx:EfnB1-/-の新生仔および4週齢マウスの成長板は短縮し動揺が認められました。以上のことからephrinB1によるEphB正方向性シグナルの活性化が破骨細胞機能を阻害すること、一方で、ephrinB1による逆方向性シグナルによって成長板および石灰化物形成を促進することが示されました。これらのことは骨形成前駆細胞によって発現するephrinB1は、軟骨内骨化および骨モデリングに寄与することを示しています。

齋藤 暁子