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ASBMR 2017 レポート
大幡 泰久(大阪大学大学院医学系研究科小児科)

大幡 泰久

ASBMR2017ではX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)に対する抗FGF23抗体製剤(Burosumab)の治験の報告が複数なされていた。以下にそれらの発表を紹介する。

紹介演題 [1]
[LB-1159] A Phase Randomized, 24 Week, Double-Blind, Placebo-Controlled Study Evaluating the Efficacy of Burosumab, an Anti-FGF23 Antibody, in Adults with X-Linked Hypophosphatemia (XLH)

キーワード

代謝性骨疾患, FGF23, リン

研究グループ

Karl Insogna

  • Yale University School of Medicine
サマリー&コメント

本治験は成人XLH患者に対するBurosumabの有効性及び安全性を検討する第Ⅲ相多施設二重盲検プラセボ対照試験であり、24週の時点での結果が発表されていた。被験者は134名の18歳から65歳までの成人XLH患者であり、血中リン濃度はベースラインで2.5 mg/dl未満で骨痛を有する患者である。スクリーニングと1対1にランダマイズ化されたのち、二重盲検で1 mg/kgのBurosumabを4週に1回皮下注射される治療群とプラセボ群の2群で24週間投与される。なおプラセボ群も24週以降は治療投与群になることが定められている。本研究の主要評価項目はベースラインに比較して24週後の平均血中リン濃度が2.5 mg/dl以上となる比率の評価であり、副次評価項目は骨痛やこわばり、身体機能といった臨床徴候項目の評価やP1NPとCTxの変化、レントゲンにおける骨折や偽骨折の治療効果、そして安全性である。主要評価項目である血中リン値はBurosumab投与群で増加し24週の時点で2.5 mg/dl以上となった割合は94.1%であり、プラセボ群の7.6%に比較して有意に高値であった。臨床徴候項目も上記いずれも改善を示した。骨折、偽骨折の治癒した割合がプラセボ群18%に対してBurosumab投与群44%であり、オッズ比は7.76で有意に治療効果を認めた。P1NPとCTxはいずれも12週、24週の時点で有意に増加しており、骨代謝回転が増加したことを示唆する結果であった。一方で血中カルシウム、PTH、尿中カルシウム排泄は臨床的に影響を及ぼすような変化は認められず、腎石灰化にも有意な差は認められなかった。安全性評価では重篤な有害事象は両群ともに認められず、最も多かった副反応は注射部位の局所反応であったが、これはBurosumab投与群とプラセボ群でともに8例ずつであり、両群間で差を認めなかった。

紹介演題 [2]
[1154] Burosumab, a Fully Human Anti-FGF23 Monoclonal Antibody for X-linked Hypophosphatemia (XLH): Final 64-Week Results of a Randomized, Open-label Phase 2 Study of 52 Children

キーワード

代謝性骨疾患, FGF23, 小児

研究グループ

Michael Whyte

  • Shriners Hospital for Children
サマリー&コメント

本治験は5-12歳の小児XLH患者を対象としたBurosumab反復投与後の安全性、予備的な有効性、薬物動態を検討する第Ⅱ相多施設共同非盲検試験である。被験者は52名の5-12歳のXLH患者で思春期前の患者(Tanner分類<2)である。被験者はBurosumabを2週に1回と4週に1回投与される2群に振り分けられ、開始用量は前者が0.1, 0.2, 0.3 mg/kg、後者が0.2, 0.4, 0.6 mg/kgで最長64週投与されている。主要評価項目はくる病重症度判定で、副次評価項目は血中リン濃度、Tmp/GFR、ALP、成長率、6分間歩行、安全性である。くる病重症度判定では2週に1回投与群で58%の改善、4週に1回投与群で44%の改善を認めた。次にベースラインのくる病重症度がより重度である患者のみを評価したところ、2週に1回投与群で62%の改善、4週に1回投与群で55%の改善とさらに顕著な改善を認めた。またTmp/GFRと血中リン濃度はいずれの群でも上昇したが2週に1回投与群でより安定してこれらの値を正常範囲内に保つ結果であった。なお高リン血症の副反応はいずれの群でも認められなかった。また血中活性型ビタミンD濃度とALP値はともに有意に低下した。身長のZスコアの変化率はベースラインと比較して両群ともに改善を認めたが、こちらも2週に1回投与群でより顕著な効果を示した。一方で血中カルシウム、PTH濃度と尿中カルシウム排泄は臨床徴候に影響を及ぼすような変化は認められず、腎石灰化、心筋異所性石灰化症例も両群ともに認められなかった。副反応としては4週に1回投与群で1名発熱、筋肉痛で入院を要する症例があり、これが重篤な副反応として報告されていたが1日で症状の改善を認めたと報告されていた。
また同じ治験から機能的能力における効果判定を6分間歩行検査の結果で評価した報告が[FR0331/SA0331] Effects of Burosumab (KRN23), a Fully Human Anti-FGF23 Monoclonal Antibody, on Functional Outcomes in Children with X-linked Hypophosphatemia (XLH): Final Results from a Randomized, 64-week, Open-label Phase 2 Studyでポスター発表されており、運動能力の改善を両群で認めていたがその効果は2週に1回投与群でより顕著であった。

紹介演題 [3]
[MO0695] The Effects of Burosumab (KRN23), a Fully Human Anti-FGF23 Monoclonal Antibody, on Phosphate Metabolism and Rickets in 1 to 4-Year-Old Children with X-linked Hypophosphatemia (XLH)

キーワード

代謝性骨疾患, FGF23, 小児

研究グループ

Eric Imel

  • Indiana University School of Medicine
サマリー&コメント

本治験は1-4歳の小児XLH患者を対象に安全性、有効性、薬物動態を検討する第Ⅱ相治験である。被験者は13名の1-4歳のXLH患者で7日間のWash-out期間でビタミンD製剤やリン製剤を中止したのち、Burosumabを2週に1回投与されている。投与量は0.8 mg/kgであるが血中リン濃度を見て1.2 mg/kgまで増量することが可能であり、実際の投与量は0.8-0.89 mg/kgであったと報告されている。40週の時点での主要評価項目は血中リン濃度であり、副次評価項目は血中活性型ビタミンD濃度、ALP、尿中リン排泄、くる病所見、安全性である。血中リン濃度は40週目まで正常下限として設定された3.2 mg/dl以上を維持しており、活性型ビタミンD濃度も有意に上昇を示した。ALP値は20週の時点で有意に低下しており、40週の時点でも有意にその治療効果は持続していた。くる病重症度判定をベースラインと比較すると、手首、膝ともに有意な改善を示した。また臨床徴候に影響を及ぼす血中カルシウム、PTH濃度、尿中カルシウム排泄には変化は見られず、高リン血症を呈する症例も認められなかった。

Burosumabの治験が成人、小児ともに進んでおり、今後本疾患に対する治療薬として開発されることが期待される。