日本骨代謝学会

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ASBMR 2017レポート
永田 友貴(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学)

紹介演題 [1]
The GABAB1R is a Critical Promoter of PTH Secretion in Ca2+-deficient and Hyperparathyroidism States

キーワード

GABAB1R, Calcium Sensing Receptor, PTH

研究グループ

Amanda Herberger1, Jenna Hwong1, Hanson Ho1, Alfred Li1, Zhiqiang Cheng1, Frederic Jean-Alphonse2, Chia-Ling Tu1, Jean-Pierre Vilardaga2, Wenhan Chang1

  • 1. University of California, San Francisco, United States
  • 2. University of Pittsburgh School of Medicine, United States
サマリー&コメント

【背景】
副甲状腺細胞は副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し、細胞外カルシウム(Ca)濃度の安定に重要な役割を果たしている。血清Ca濃度の増加によるカルシウム感知受容体(CaSR)およびその下流のGq/11シグナリング活性化を介してPTH分泌は抑制され、反対に血清Ca濃度の低下はPTH分泌を促進する。G蛋白共役受容体(GPCR)ファミリーであるCaSR およびB型GABA受容体1(GABAB1R)はと生理学的に相互作用を示し、共にヒトおよびマウス副甲状腺細胞に発現している。本研究ではGABAB1RがPTH分泌に関与するメカニズムについて検討を行った。
【方法】
CaSRおよびGABAB1Rがヘテロ複合体を形成することを検討するために、HEK-293細胞に両遺伝子を発現させin vitro実験を行った。GABAB1RアゴニストであるBaclofenのin vivoでの投与、マウス副甲状腺へのex vivoでの添加を行い、PTH分泌を測定した。副甲状腺細胞特異的GABAB1Rノックアウト・CaSRヘテロノックアウトマウスを作製し、それらのマウスにおける血清CaおよびPTHを測定した。
【結果】
(1)ヒトおよびマウス副甲状腺細胞でGABAB1RとCaSR発現を認め、共免疫沈降法にてそれらのヘテロ複合体形成を確認した。
(2) CaSRおよびGABAB1Rを共発現したHEK-293細胞において、Baclofenは著明にCaSR-mediated Gq活性化を減少させた。
(3) Baclofen注射は急速に血清PTHレベルをマウスで増加させた。
(4) BaclofenによるGABAB1R活性化は培養副甲状腺において血清PTHレベルを増加させた。
(5) 副甲状腺特異的GABAB1Rノックアウトマウスでは低PTH血症および低Ca血症が認められ、低Ca食に対する血清PTHレベルの増加が認められなかった。
(6) 副甲状腺特異的CaSRノックアウトマウスの表現型である副甲状腺機能亢進症および高Ca血症はGABAB1Rを同時にノックアウトすることで改善した。
【結論】
Ca欠乏とそれに伴う副甲状腺機能亢進症のPTH分泌促進におけるGABAB1Rの重要な役割だけでなく、CaSR/GABAB1RヘテロマーおよびCaSR/CaSRホモマーがそれぞれのシグナル反応の平衡によって、副甲状腺細胞での細胞外Ca変化を感知に関わることが証明された。
【コメント】
副甲状腺における血清Ca感知およびPTH分泌機構にCaSR以外の経路であるGABAB1Rが関与することが解明されたことは非常に興味深い。今回証明されたメカニズムの生理的役割や副甲状腺疾患における病態への関与など、今後さらなる検討が期待される。

紹介演題 [2]
The extra-largeGprotein alpha-subunit (XLαs) mediates FGF23 production by maintaining FGFR1 expression and MAPK signaling in bone.

キーワード

XLαs, FGF23, FGFR1

研究グループ

Qing He1, Cumhur Aydin2, Marc Wein1, Jordan Spatz1, Regina Goetz3, Moosa Mohammadi3, Antonius Plagge4, Paola Pajevic Divieti Pajevic5, Murat Bastepe1

  • 1. Endocrine Unit, Department of Medicine, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, United States
  • 2. Department of Endodontics, Gülhane Military Medical Academy, Turkey
  • 3. Department of Biochemistry & Molecular Pharmacology, New York University School of Medicine, United States
  • 4. Department of Cellular and Molecular Physiology, Institute of Translational Medicine University of Liverpool, United Kingdom
  • 5. Department of Molecular & Cell Biology, Boston University School of Dental Medicine, United States
サマリー&コメント

【背景】
PTHで刺激される細胞内シグナルはG protein α-subunit (Gsα)を介し、骨芽細胞においてはリン利尿ホルモンである繊維芽細胞増殖因子23 (FGF23)産生を促進する。Extra-large Gα-subunit (XLαs)はG protein a-subunit (Gsa)のバリアントのひとつであり、過剰発現させたXLαsはGαsの細胞に対する作用と同等の働きをするが、ミネラル代謝における役割および特有の作用については明らかにされていない。本研究では、XLαsがFGF23産生に関与するメカニズムについての検討を行った。
【方法】
マウス骨組織においてXLαs分布を検討した。XLαs ノックアウト(XLKO)マウスを作製し、血清リン、1,25(OH)2DおよびFGF23を測定し、さらに腎臓におけるCyp27b1、Cyp24a1、Npt2a発現および大腿骨Fgf23・FGFR1発現、ERK1/2リン酸化をWTと比較した。マウス骨細胞株Ocy454に対し、CRISPR/Cas9にてXLαsをノックアウトし、in vitroの検討を行った。
【結果】
XLαsは出生早期の発達において骨細胞と骨芽細胞に発現を認めた。出生後10日目にXLαsノックアウト(XLKO)マウスは高リン血症および血清1,25(OH)2Dの有意な増加を認めた。同時期のXLKOマウス腎臓において、WTと比較してCyp27b1発現の増加を認めた。さらにXLKOマウス腎臓の刷子縁膜において、ナトリウム・リン共輸送体であるNpt2a発現の増加も観察された。これらの所見に一致してXLKOマウスで血清FGF23レベルは有意に減少した。XLKOマウス大腿骨のFGF23発現レベルも同様に有意に低下すると共に、FGFR1発現も低下し、ERK1/2のリン酸化の減少も認められた。XLKOマウスに変異FGF23(FGF23R176Q/R179Q)を投与すると血清Pは正常化し、腎Cyp27b1発現レベルも有意に減少した。In vitroではCRISPR/Cas9にてOcy454でXLαsをノックアウトすると、FGF23および FGFR1発現は有意に低下し、同時にERK1/2リン酸化も減少した。加えて、WT Ocy454でCRISPR/Cas9 Synergistic Activation MediatorによりFGFR1発現の転写を活性化させると、FGF23発現は上昇し、XLKOしたOcy454では低下したFGF23は回復した。
【結論】
これらの結果から、XLαsはFGFR1発現およびMAPKシグナルを維持することによって、骨におけるFGF23産生を促進することが示唆された。
【コメント】
本研究は出生早期のミネラル代謝におけるXLαsの役割を明らかにしたものである。今回の検討ではPTHやその下流にあるGαsについてのデータは発表されておらず、それらとXLαsとの関連について更なる検証を行っていくものと考えられた。