日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨ルポ

TOP > 骨ルポ > ASBMR 2019 > 高畑 佳史

ASBMR 2019 レポート
高畑 佳史(大阪大学大学院 歯学研究科 生化学教室)

高畑 佳史
学会会場のコンベンションセンター前の様子

2019年9月20〜23日の間、フロリダ州オーランドにて開催されたASBMR Annual Meeting に参加しました。近年のASBMRには毎年参加しており、特にオーラルセッションの敷居の高さを感じていましたが、今年度はなんと私の演題’’Smoc1 and Smoc2 regulate bone formation as the novel downstream molecules of Runx2’’がプレナリーオーラルに採用され、嬉しさと驚き半分の気持ちが入り混じった状態で日本を出発しました。フロリダは年中暖かく、日本のようなジメジメとした蒸し暑さを感じず丁度過ごしやすい気候でしたが、現地に到着してからも緊張感が抜けず、落ち着かない学会参加となりました。

魅力的な発表が多かった本年度の演題の中で、今回印象に残ったものについてご紹介させていただけたらと思います。

紹介演題 [1]
Cells targeted by Dmp1-Cre, but not Sost-Cre or CD19-Cre, are a major source of the OPG controlling osteoclast formation in young mice.

キーワード

Osteocyte, Dmp1, OPG, Osteoblast

研究グループ

Keisha Cawley, Jinhu Xiong, Ryan Macleod, Igor Gubrij, Yu Liu, Robin Mulkey, Michela Palmieri, Joseph Goellner, Charles O’Brien

  • University of Arkansas for Medical Sciences, United States
サマリー&コメント

OPGはRANKLに結合し、RANKに対するおとり受容体として破骨細胞形成を抑制することが知られている。これまでの研究報告から破骨細胞形成の抑制に関連するOPGの供給源は骨細胞であると間接的に示されてきた。本演題ではCRISPR/Cas9によるゲノム編集によりOPG-floxマウスを作成し、数種類のCREドライバー系統マウスと交配させ、様々な細胞系でOPG を欠損したマウスを作成し骨表現系を解析した。Dmp1-Creトランスジェニックマウスを使用して骨芽細胞、骨細胞、Bone lining cellでOPGをノックアウトすると、海綿骨BV/TV値は全身OPGノックアウトマウスと同程度の減少を示した。また循環血液中OPGレベルには影響を与えなかったため、骨微小環境中のOPGが破骨細胞形成に重要であることが示唆された。次にSost-Creトランスジェニックマウスを使用して、骨細胞、造血系細胞でOPGをノックアウトすると、海綿骨量はコントロールマウスに比べ有意に減少したが、その効果は全身OPGノックアウトマウス、Dmp1-Creを使用したOPGノックアウトマウスに比較するとその減少効果はわずかであった。さらにBリンパ球特異的にOPGをノックアウトしたCD19-Creマウスを使用して同様の解析を行ったが、皮質骨または海綿骨量に対して影響を与えなかった。これらの結果から、骨芽細胞、Bone lining cell由来のOPGが破骨細胞形成抑制に関与している主要な供給源であることが示された。特に近年は、Cre側のドライバーを複数種類使用して、遺伝子破壊の表現系を解析する研究がしばしば見受けられ、これらのツールを利用し遺伝子の時期特異的、細胞種特異的な作用を考慮に入れた解析は、in vivoでの重要性を考察する上で役に立つのではないかと考える。

紹介演題 [2]
Fip200, an essential autophagy gene, mediates the anabolic action of PTH in bone.

キーワード

Autophagy, Osteoblast, PTH

研究グループ

Shuqun Qi, Li Wang, Han Kyoung Choi, Laurie McCauley, Fei Liu, Jian Pan, Jun-LinGuan

  • University of Michigan School of Dentistry
サマリー&コメント

骨粗鬆に対してはPTH製剤がその治療に使用されている。PTHは培養骨芽細胞の同化作用を促進し、オートファジーマーカーを増大させる。オートファジー誘導に不可欠な遺伝子であるFip200 (FAK-family Interacting Protein of 200kDa)の骨芽細胞特異的ノックアウトマウスを使用し、オートファジーがPTHによる骨芽細胞の同化作用を媒介するかどうかを検討した。Fip200 flox/flox, Osx-CreマウスとコントロールマウスにPTHを毎日80μg/kg投与し、Vehicle処置群と比較した。その結果、μCT解析によると、PTH投与でコントロールマウスで大腿骨皮質面積が10%増加を示したが、コンディショナルノックアウト(CKO)マウスでは増加しなかった。さらにPTH投与によりコントロールマウスの骨梁および皮質骨における破骨細胞数の増加が観察されたが、CKOマウスでは影響が見られなかった。またCKOマウスの骨のPth1rのmRNA発現はコントロールマウスの発現と同等だった。以上のことからFip200/オートファジーは、PTH誘導性骨芽細胞数の増加、活性化ならびに骨リモデリングを促進することから、骨におけるPTHの同化作用を仲介することが示された。

骨粗鬆症に対してPTH製剤を用いた治療法が確立されているが、本演題は、骨代謝回転の促進とオートファジー関連タンパク質の機能的役割を明らかにしたものである。オートファジー関連タンパク質は破骨細胞での解析も進んでおり、今後もオートファジーと骨組織を構成する細胞系での役割解明が進んでいくだろうと思われる。

高畑 佳史
フロリダは海が近くシーフードが有名らしいので、先輩方と一緒に会場近くのレストランへロブスターを食べに行きました。