日本骨代謝学会

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ASBMR 2019 レポート
田中 賢一郎(島根大学医学部 内科学講座 内科学第一)

田中 賢一郎
ポスター発表(右:マギル大学ゴルツマン教授)

紹介演題 [1]
Irisinは、in vitroとin vivoでαVインテグリン受容体を介して破骨細胞分化を直接制御する

キーワード

irisin、破骨細胞、マイオカイン

研究グループ

Eben Estell

  • Maine Medical Center Research Institute
サマリー&コメント

骨格筋から分泌される様々な生理活性物質はマイオカインと呼ばれる。FNDC5(Fibronectin type III domain-containing protein 5)の細胞外ドメインが切断され血中に分泌されるirisinは、白色脂肪細胞の褐色化に関与するマイオカインとして知られるが、破骨細胞分化に及ぼす影響の詳細は不明である。今回、筋特異的FNDC5過剰発現マウスを用いて、irisinが破骨細胞分化に及ぼす影響を検討した。McKプロモーターを用いたFndc5過剰発現マウスでは、生後2か月および4.5か月で海綿骨量と皮質骨量の低下を認めた。生後4.5か月での組織形態計測では、骨量低下と破骨細胞数の増加を認めた。mCSFとRANKLを加えて培養したFndc5過剰発現マウス由来の初代BMSCsは野生型と比較し、破骨細胞分化が促進した。さらに、irisinの7日間投与はC57BL/6J(B6)雌マウス由来の初代BNSCsの破骨細胞数を増加させ、その作用はαVインテグリン受容体抗体(αVβ3、αVβ5)により抑制された。このことから、irisinはαVインテグリン受容体を介して破骨細胞分化を増加させ、骨形成を減少させる可能性がある。

紹介演題 [2]
Irisinは、Erkシグナルの活性化を介した骨細胞のアポトーシスの抑制により、変形性関節症を減少させる

キーワード

irisin、変形性関節症、Erk

研究グループ

Zihao He

  • Shanghai Jiao Tong University
サマリー&コメント

Irisinは骨リモデリングに重要なマイオカインとされるが、変形性関節症に及ぼす影響は不明である。今回、生後3か月のC57BL/6J雄マウスを偽手術群、irisin非投与前十字靭帯切断(ACLT)群、irisin投与ACLT群の3群に分けた。HE染色とsafranin O染色を用いたOARSIスコアでの評価により、irisin投与ACLT群では他群と比較し、軟骨変性が減少、硝子体軟骨および石灰化軟骨が増加した。さらに、irisinは軟骨と軟骨下骨のcaspase3、Bax、MMP-13蛋白を減少させた。μCTによる骨微細構造の評価では、irisinは骨梁数、骨量を増加させた。またMLO-Y4細胞において、irisinは細胞増殖を促進、メカニカルストレスにより誘導されるアポトーシス(Bax、Bcl-2、c-myc mRNA)を抑制、Erkシグナル(リン酸化Erk1/2、p38蛋白)を増加させた。このことから、irisinはErkシグナルの活性化を介した骨細胞のアポトーシス抑制により変形性関節症の進行を抑制する可能性が考えられた。今後irisinと骨リモデリングに関与する各細胞機能の関連性についてのさらなる検討が待たれる。