日本骨代謝学会

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ASBMR 2019 レポート
土佐 郁恵(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 組織機能修復学分野)

土佐 郁恵
ケネディ宇宙センターにて

紹介演題 [1]
Biglycan Regulates Inflammation and Bone Formation During Fracture Healing (FRI-90)

キーワード

バイグリカン、創傷治癒

研究グループ

Reut Shainer

  • Molecular Biology of Bones and Teeth Section, NIDCR, NIH
サマリー&コメント

バイグリカンは、骨格筋、骨、軟骨、血管内皮、角化細胞の細胞表面や細胞外マトリックスに多く存在するプロテオグリカンである。発表者のグループは、マウスの大腿骨創傷治癒モデルにおいて、受傷後に骨膜でバイグリカンの発現が上昇することを見出し、バイグリカンと骨の創傷治癒の関連を調べるため、バイグリカンノックアウトマウスを用いた解析を行った。その結果、バイグリカンノックアウトマウスでは野生型マウスに比較し、受傷後の炎症性サイトカイン及びマクロファージが減少していた。さらに、RNA-Seq解析を行ったところ、バイグリカンノックアウトマウスではIL-10などの炎症抑制性サイトカインの発現が上昇しており、Bmp1,Col1a1,Sox9など骨化に重要な因子の発現が低下していることが明らかとなった。そこで、受傷後8週の大腿骨をµCTにて解析した結果、バイグリカンノックアウトマウスでは野生型マウスに比べて骨量および海綿骨梁数の低下が認められ、骨の治癒不全が生じていることが明らかとなった。

紹介演題 [2]
Characterization of a novel perivascular DMP1+ osteoprogenitor associated with trans-cortical channels of long bone (FRI-388)

キーワード

Dmp1、骨前駆細胞

研究グループ

Sierra Root

  • Department of Reconstructive Sciences, University of Connecticut Health Center
サマリー&コメント

骨の非コラーゲン性基質であるdentin matrix protein (DMP1)は、その遺伝子発現が骨細胞に特異的であることが知られており、骨細胞マーカーとして広く用いられている。発表者のグループは、皮質骨に骨細胞とは異なるDMP1 Cre target cellのポピュレーションが存在するという仮説のもと、Tamoxifen誘導的にDMP1 Cre target cellを標識するマウス(DMP1CreERT/Ai9/Col2.3GFP)を樹立した。このマウスの解析結果より、皮質骨において血管周囲にDMP1Creでtargetされる骨前駆細胞の存在を同定した。これらのDMP1 Cre target骨前駆細胞は遊走能・増殖能・骨芽細胞への分化能をもち、血管形成と協調した挙動を示した。また、骨の創傷治癒にも寄与するもののその役割は限定的であり、PTH反応性にその数が増加することが明らかとなった。

本演題を含め、Stem cellに関する演題においては、その多様性が活発に議論されていました。シングルセルRNA-Seq解析や組織学的解析により、局在(骨髄・骨膜・骨内)、分化する骨の種類(皮質骨・海綿骨)、役割(骨格発生・創傷治癒など)の異なる様々なStem cellのポピュレーションが同定される中で、in vivoでの機能的な解析の重要性を実感しました。