日本骨代謝学会

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ASBMR 2019 レポート
中島 健太(協和キリン株式会社 研究開発本部 腎R&Dユニット 腎研究所)

紹介演題 [1]
A potential nextgeneration sclerostin inhibitor specifically targets sclerostin monomer for bone anabolic therapy with low cardiovascular risk in osteogenesis imperfecta mice

キーワード

Sclerostin, 骨形成

研究グループ

Qing Ren et al.

  • Hong Kong Baptist University
サマリー&コメント

スクレロスチンはWnt経路抑制因子として知られている。近年、抗スクレロスチン抗体が強い骨形成促進作用を示すことで、日本、米国で承認された。しかし、骨形成促進効果ベネフィットと、心血管系有害事象発現リスクを天秤にかけて考慮する必要があり、課題視されている。本発表ではスクレロスチンタンパクloop3に特異的に結合するアプタマーが、心血管有害事象を発現することなく、骨形成促進作用を示すことが報告された。発想の起点は、彼らは、二量体スクレロスチンがマウスでの大動脈瘤形成に関与することを見出していることであり、単量体スクレロスチンのみに作用することを狙った。心動脈瘤の評価は、ApoE-/-マウスを用いて検証された。抗スクレロスチン抗体の課題である心血管有害事象を、薬効と乖離できる本発見は、創薬の観点で重要な示唆であった。またその作用がスクレロスチンの二量体化から解明されつつあることは非常に興味深い。

紹介演題 [2]
The effect of SNP rs2887571 (located in an estrogen receptorα bindinf site) on WNT5B function in bone

キーワード

Wnt, 骨形成

研究グループ

Sarocha Suthon et al.

  • UTHSC
サマリー&コメント

Wnt経路と骨形成に関して古くから研究がなされている。しかし、骨芽細胞に対する非古典的Wnt経路の役割についての解析は数少なく、明らかになっていない点も多い。この発表の着想は、エストロゲン欠乏における骨粗鬆症の発生であり、17βエストラジオールは骨芽細胞/破骨細胞のバランスを制御していることは有名な話である。GWASにおいて明らかとなったBMDに関連するSNPのうち、唯一ERα結合部位とと重なっていたのが遺伝子WNT5Bの45kb上流の領域であった。本発表では、WNT5Bの骨形成に関する役割が、初めて詳細に示された。ヒト骨芽細胞を用いた実験で、17βエストラジオールはWNT5Bの発現を低下させた。またOVXマウスではWNT5Bの発現が亢進していた。また、WNT5Bはマウス骨芽細胞の分化を阻害した。さらに、WNT5Bは古典的WNT経路を活性化するのではないこともレポーターアッセイを用いて示された。骨芽細胞分化における非古典的Wnt経路の機能に関しては、現在も次々とデータが更新されている。骨形成に関連する経路の特定、およびその選択的な調節が、次なる骨形成薬のヒントとなると強く感じられた。