日本骨代謝学会

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ANZBMS 2019 レポート
右藤 友督(長崎大学生命医科学域口腔インプラント学分野)

右藤 友督

紹介演題 [1]
Deciphering the Secretory Lysosome ‘Transportome’ Unveils Novel Regulators of Osteoclast Function and Bone Homeostasis.

キーワード

破骨細胞,リソソーム,SLC37a2

研究グループ

Amy B.P.Ribet[1], Daniel Yagoub[1], Jamie Tan[1], Laila N. Abudulai1[2], Pei Ying Ng[1], and Nathan J, Pavlos[1]

  • [1] School of Biomedical Sciences, The University of Western Australia, Perth, WA, 6009
  • [2] Centre for Microscopy, Analysis and Characterisation and School of Molecular Sciences, The university of Western Australia, Perth WA, 6009
サマリー&コメント

破骨細胞による骨吸収は、細胞内外の活発なタンパク輸送が関与し、特に骨基質を分解する酵素の運搬にはリソソームの膜輸送タンパクが不可欠である。しかしこの輸送タンパクが破骨細胞の波状縁にどのくらい存在し、いかに機能しているのかは現在も不透明である。著者らは磁性ナノビーズを用いて破骨細胞からリソソームを抽出し、プロテオーム解析から複数の骨吸収関連タンパクを同定する手法を確立した。同定したタンパクの中でも、SLC37a2が骨吸収作用に与える影響が大きいことを明らかにし、SLC37a2ノックアウトマウスを用いて骨組織への影響を示した。SLC37a2ノックアウトによりマウス大腿骨の骨量、骨密度は増大した。破骨細胞の波状縁形成と骨吸収が抑制された一方、破骨細胞自体の分化能は影響を受けなかった。またOVXマウスにおいても骨吸収抑制作用を示した。

著者らはSLC37a2ノックアウトが骨芽細胞には影響を与えないことも発表しており、骨芽細胞と破骨細胞のカップリングには関与しないことが予測される。骨吸収のみに関わるタンパクであれば、効率的に骨強度を向上する治療法の開発にも繋がるのではないかと思われる。

紹介演題 [2]
The systemic effect of Parathyroid Hormone and Alendronate on femoral bone volume in the rat ulnar stress fracture model

キーワード

ビスフォスフォネート,PTH,骨折

研究グループ

Mahmoud M Bakr[1][2], Nupur Kanwar[1], Wendy Kelly[2], Athena Brunt[2], Bradley C Paterson[2], Bridie Mulholland[2], Mark R Forwood[2]

  • [1] School of Dentistry and Oral Health, Griffith University, Gold Coast, Queensland, Australia
  • [2] School of Medical Science, Griffith University, Gold Coast, Queensland, Australia
サマリー&コメント

骨粗鬆症患者に使用されるビスフォスフォネート製剤は、骨強度を維持する働きを持ち有効な治療薬であるが、長期の使用により非定型大腿骨骨折(AFF)などの副作用を惹起する可能性がある。一方PTHの継続投与は骨吸収を促進し、断続投与では骨形成を促進することが知られている。

この研究ではPTHとアレンドロネート(ALN)の全身効果を、ラット尺骨疲労骨折モデル(Stress Fracture, SFx)を使用して検索した。SFxラットに対し、PTH単回投与群、PTH14日間投与群、ALN14日間投与群、ALN+PTH14日間投与群を作成した。尚ALNとALN+PTHはSFxより前に14日間ALNが投与されている。それぞれ2週後、6週後に屠殺して各種解析が行われた。PTH単回投与はPTH14日投与群よりも骨量の増加と皮質骨面積の増加が認められた。ALN+PTH群では、ALN単独と比較して骨梁面積ならびに皮質骨面積が有意に増加し、破骨細胞数は有意に減少した。ALN+PTH群の結果はPTH14日間投与群の結果と同様の傾向を示した。

各群間で骨構造の変化と破骨細胞の動きが大きく解釈が難しく感じられたが、疲労骨折モデルに対する薬剤の全身効果として今回の実験ではPTHの単回投与が最も有意に変化したと言われていた。ビスフォスフォネート系薬剤は歯科領域にも関りが深いため他剤との併用効果は興味深い内容であった。

右藤 友督