日本骨代謝学会

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ECTS 2021 レポート
池戸 葵(愛媛大学プロテオサイエンスセンター病態生理解析部門)

紹介演題 [1]
Mast cells critically regulate bone repair and osteoclast activity under estrogen-deficient conditions

キーワード

肥満細胞,エストロゲン,骨折治癒

研究グループ

Verena Fischera, Deniz Ragipoglua, Johanna Diedricha, Anne Dudeckb, Miriam Kalbitzc, Florian Gebhardc, Melanie Haffner-Luntzera, Anita Ignatiusa

  • [a] Institute of Orthopaedic Research and Biomechanics, University Medical Center Ulm, Ulm, Germany
  • [b] Institute for Molecular and Clinical Immunology, Otto-von-Guericke University Magdeburg, Magdeburg, Germany
  • [c] Department of Traumatology- Hand– Plastic– and Reconstructive Surgery, University Medical Center Ulm, Ulm, Germany
サマリー&コメント

肥満細胞 (Mast cells; MCs) は、炎症や免疫反応などの生態防御機構に重要な役割を持つ。一方で、骨粗鬆症患者の骨髄中においてMCsの増加が認められることから、骨代謝に影響を及ぼすと考えられている。著者らは以前、MC欠損マウスにおいて、卵巣摘出 (OVX) 誘発性骨量減少の抑制、および骨折治癒過程における仮骨量の増加を認めることを見出し、これらはいずれも破骨細胞形成の抑制に起因していた。本研究では、MCがOVX誘発性骨修復遅延にも関与しているかどうか検証を行った。

Shamマウスと比較してOVXマウスでは、骨折6時間後の炎症反応期おける血清炎症性サイトカイン (IL-6, CXCL10) レベルが増加し、骨折21日後の仮骨のbending stiffness、骨量、サイズの低下を認め、破骨細胞の数および活性も増加した。一方、驚くべきことにMC欠損マウスでは、上述のようなShamマウスとOVXマウスの差が認められなかった。すなわち、MC欠損はエストロゲン欠乏による負の影響から骨を保護する作用があることが示唆された。さらに、in vitroにおいてconditioned MC-mediaにて破骨細胞形成を刺激したところ、MCのERαを介したエストロゲン作用によって破骨細胞形成が抑制されることを認めた。また、エストロゲンは、MCによる破骨細胞形成因子CXCL10およびMdkの放出を減少させた。以上のことから、MCsは、エストロゲン欠乏による骨量減少や骨折修復遅延に対する治療ターゲットになり得る可能性が示された。

OVXによる骨量減少や骨折修復遅延がMCsの欠損で軽減されることに非常に驚き、興味深いと感じました。エストロゲンによるMCsを介した骨代謝制御機構について、今後の詳細な分子メカニズム解明に期待したいです。

紹介演題 [2]
Extramedullary erythropoiesis is activated during hematoma phase of bone healing in mice

キーワード

脾臓髄外造血, 骨折治癒, 炎症期

研究グループ

Drenka Trivanovica,b, Theresa Kreuzahlera,b, Bianca Schlierfa,b,Ana Rita Pereiraa,b, Maximilian Rudertb,c, Marietta Herrmanna,b

  • [a] University Hospital Wuerzburg, IZKF Group Tissue Regeneration in Musculoskeletal Diseases, Wuerzburg, Germany
  • [b] University of Wuerzburg, Bernhard-Heine-Center for Locomotion Research, Wuerzburg, Germany
  • [c] University of Wuerzburg, Department of Orthopedic Surgery- König-Ludwig-Haus, Wuerzburg, Germany
サマリー&コメント

筋骨格系と造血系は、骨折治癒中に密接に相互作用している。骨折治癒において骨髄造血前駆細胞の動員は重要であることが示されているが、髄外造血の関与は不明である。本研究では、髄外造血は炎症反応中に惹起されることから、脾臓髄外造血が骨折治癒過程の炎症性血腫期に関与するか検証を行った。

骨折後3日目において、末梢血中の赤血球数とヘモグロビンレベルが、骨折の無いコントロールと比較して、有意に減少した。また、血中EPOのタンパク質レベル及び脾臓重量・脾細胞数は、骨折治癒中に増加し、7日目に最高値に達した。全体的な造血コロニー形成能は、脾臓で骨折後3日目および7日目に増加したが、骨髄では変化しなかった。脾臓赤血球コロニー形成単位は、対照群と比較して、骨折後3日目に増加した。脾臓の未成熟赤血球細胞 (Ter119- CD71high、Ter119+ CD71high、Ter119+ CD71med) の割合は、3日目に上昇し、これはc-kit発現の増加と関連していた。また、3日目に単離された脾細胞では、EpoRおよびBMP4 mRNA発現の増加が認められた。さらに、骨折後1日目の血腫由来培地を用いて培養された骨髄間質細胞ではBMPRsの発現が増加した。以上のことから、炎症性血腫期に刺激された髄外赤血球生成が、EPOとBMP4によって制御され、これらが骨折治癒に影響を与える可能性を示唆した。

本研究で見られた骨折中の髄外造血の大幅な変化が骨折治癒に対してどのような役割を果たすのか、今後の検討が楽しみです。