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ECTS 2022 レポート
田畑 香織(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科矯正学講座)

紹介演題 [1]
Effect of aging on the Osteocyte Lacuno-Canalicular Network in human osteonal bone

キーワード

骨細胞, 骨細胞ネットワーク, 加齢変化

研究グループ

C. Jones[a], S. Blouin[a], M. Rummler[b], R. Weinkamer[b], A. Berzlanovich[c], M. A. Hartmann[a]

  • [a] Ludwig Boltmann Institute of Osteology at Hanusch Hospital of OEGK and AUVA Trauma Centre Meidling, Vienna, AT
  • [b] Department of Biomaterials, Max Planck Institute of Colloids and Interfaces, Potsdam, Germany
  • [c] Unit of Forensic Gerontology, Centre of Forensic Science, Medical University of Vienna, Vienna, Austria
サマリー&コメント

骨細胞ネットワークは、骨リモデリングに必要不可欠である。本研究では、加齢変化と骨基質の石灰化度は骨細胞ネットワークの形成に影響を及ぼすか検討を行った。
健康かつ骨疾患の既往がない3名の若い女性(平均年齢 57.3歳)と3名の高齢女性(平均年齢93.5歳)の腸骨サンプルをローダミン6G蛍光染色し、骨細胞ネットワークを共焦点顕微鏡を用いて観察した。骨細胞ネットワークの密度、骨小腔あたりの体積、骨小腔からのびている骨細管の数を形態分析し、年齢と骨小腔周囲の石灰化度の違いそれぞれで比較検討を行った。

その結果、骨細胞ネットワークの密度と骨小腔あたりの体積は高齢女性と比較して若い女性で有意に高い値を示したが、一つの骨小腔からのびている骨細管の数について有意差は認められなかった。またこれらの結果は、骨小腔周囲の石灰化度の違いによる有意差は認められなかった。以上のことから、加齢変化に伴い骨細胞ネットワークの形態が変化する可能性は示唆されたが、石灰化度は骨細胞ネットワークの形成に影響を及ぼさない可能性が示された。

骨基質の石灰化度は骨細胞ネットワークの形成に影響を及ぼさないという結果を興味深く感じた。年齢や石灰化度の違い以外に食習慣や運動習慣によっても骨細胞ネットワークの形成は影響を受けるのではないかと考える。今後のさらなる研究の結果に期待したい。

紹介演題 [2]
Degenerative Changes in the Osteocyte Network in Prematurely Aging PolgA Mice

キーワード

骨細胞突起, 骨粗鬆症, PolgA

研究グループ

Yilmaz. Dilara, Gregorio. Lorena, Gehre. Christian P., Whittier. Danielle, Qin. Xiao-Hua, ;Wehrle. Esther M., Kuhn. Gisela A., Müller. Ralph

  • ETH Zurich, Institute for Biomechanics, Zurich, Switzerland
サマリー&コメント

骨リモデリング機能の低下に伴う海綿骨の体積や皮質骨の厚さの減少などの加齢変化は、骨細胞と骨細胞突起の変化に関連している可能性がある。また、ヒトでは、骨小腔密度の低い骨基質では、易微小骨折性が示されている。PolgAマウスは、40週齢という早期に老化の複数の特徴(脱毛、灰色化、虚弱など)を示す。PolgAマウスの骨細胞と骨細胞突起を観察し、加齢に伴うそれらの形態変化を評価した。

若い(20週齢)および老齢(40週齢)のPolgA雌雄マウスおよびそれらの野生型(WT)同腹仔の大腿骨をサンプルとし、ファロイジン染色を行った。皮質骨の骨細胞および骨細胞突起を、共焦点顕微鏡を用いて観察し、ImageJにて形態解析を行った。二次元配置分散分析を行い、変異型と有無と年齢の違いによる形態変化の関連性を評価した。PolgAマウスでは、老齢群において著明な骨細胞数の減少を示した。また老齢のPolgA雄マウスは、老齢の野生型雄マウスと比較して骨細胞密度の有意な減少を認めた。PolgA型、野生型ともに老齢群では骨細胞突起数の減少が認められた。以上のことから、早期老化を特徴とするPolgAマウスでは老化に伴う骨細胞数と骨細胞突起数の減少を示し、これは易微小骨折性と関連する可能性が示唆された。

骨粗鬆症に伴う易骨折性は女性に多いイメージがあったため、今回の結果で雄マウスに有意差が出たことに興味をもった。性ホルモンとの関連など、なぜ雄マウスに有意差が出たのか今後のさらなる検討が楽しみである。