日本骨代謝学会

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ASBMR 2022 レポート
田中 寛来(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外科学分野)

紹介演題 [1]
Discovery of a vertebral stem cell driving spine metastasis

キーワード

脊椎、幹細胞、骨転移

研究グループ

JUN SUN[1], Alisha Yallowitz[1], Lingling Hu[1], Jason McCormick[1], Shawon Debnath[1], Seoyeon Bok[1], Yuzhe Niu[1], Ling Zheng[1], Michelle Cung[1], Sarfaraz Lalani[1], Kyle Morse[2], Daneil Shinn[2], Tianna Bennett[2], Adrian Tan[1], Na Li[3], Ren Xu[3], Sravisht Iyer[2], Matthew Greenblatt[1].

  • [1] WEILL CORNELL MEDICAL COLLEGE, United States
  • [2] Hospital for Special Surgery, United States
  • [3] Xiamen University, China
サマリー&コメント

椎骨と長管骨は、基本的な構造やPTHに対する反応性、腫瘍転移のしやすさなどの点で違いがある。多くの固形癌において、長管骨と比較し椎骨への転移が多いことは知られている。しかし、このような違いの理由はほとんど分かっていない。

筆者らは、Zic1+Pax1+Lin-CD200+CD105+6C3-Thy-Emb-集団として定義される椎骨骨格系幹細胞(vSSC)を同定した。vSSCは椎体終板に存在し、長期間の標識保持能力、本来の骨環境と分離・移植後の両方で軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、間質細胞への分化能、自己複製能と骨オルガノイド形成能などの幹細胞としての基準を満たしていた。vSSC特異的にosterixを欠損させると、椎骨骨量の減少や椎弓の一部欠失などの表現型を示すことから、vSSCは椎骨の生理的なミネラル化に寄与していることが示唆された。また、マウスvSSCに相当する細胞群がヒト椎骨にも存在し、マウスvSSCと同様の機能的特性を示していることを明らかにした。さらに、vSSC由来のオルガノイドが長管骨に比べて腫瘍細胞を誘導する能力が高いことから、vSSCが椎体への腫瘍細胞の転移に関与しており、これらを標的とすることで生体内における椎体への転移率が低下することが明らかとなった。

この新規に同定された幹細胞が脊椎転移のみならず、強直性脊椎炎や後縦靭帯骨化症のような脊椎関連疾患の治療標的となり得るか、今後の研究の展開に注目していきたいと思いました。

紹介演題 [2]
Pth1r Signaling in Adipoq+ Bone Marrow Cells (MALPs) Decreases Bone Mass and Restricts the Anabolic Response to PTH

キーワード

MALP、骨芽細胞、PTH

研究グループ

Lama Alabdulaaly[1], Hiroyuki Okada[2], Dorothy Hu[1], Shawn Berry[1], Hironori Hojo[2], Clifford Rosen[3], Francesca Gori[1], Roland Baron[1].

  • [1] Harvard School of Dental Medicine, United States
  • [2] The University of Tokyo, Japan
  • [3] Maine Medical Center Research Institute, United States
サマリー&コメント

PTH/PTHrPは、その受容体であるPth1rを介して骨/骨髄の様々な細胞種に作用し、骨の恒常性制御に重要とされている。アディポネクチン陽性の脂肪前駆細胞集団 (MALPs) は骨髄で同定され、骨形成の抑制と破骨細胞形成の促進が報告されている (Zhongら2020, Yuら2021)。これらの細胞はPth1rを発現していることから、MALPsにおけるPTHシグナルが骨の恒常性に影響を与えていることが示唆されている。

筆者らは、Pth1rfl/flマウスとAdipoq-Creマウスを交配することによって、MALPsでPth1rを欠損させたcKOマウスを作製した。μCT解析の結果、cKOマウスでは、海綿骨骨量の増加を示すことがわかった。骨髄のフローサイトメトリー解析の結果、cKOマウスではLin-Pdgfrα+細胞の減少が認められ、それに伴いCFU-F(線維芽細胞)コロニー数が減少していた。一方で、CFU-OB(骨芽細胞)コロニー数はコントロールとcKO2群間で同等であり、cKOマウスのBMSCsにおける骨形成能が上昇していることが示唆された。シングルセルRNA-seq解析により、アディポネクチン陽性細胞のPth1r欠損により、LeprおよびCxcl12がダウンレギュレートされることが示され、MALPsにおけるPTHシグナルがBMSCsの分化に影響を与えることが示唆された。さらに、生体内へiPTHを投与するとcKOマウスではコントロールマウスと比較し、有意な(脊椎)骨量増加が誘導され、MALPsにおけるPth1rシグナルがiPTHにおける骨同化作用を制御することが示された。

Pth1rシグナルが細胞種によって、逆の作用を示すという本研究の結果は私にとって大変興味深いものでありました。臨床的にも、患者間でPTH製剤に対する反応性が異なることはしばしば経験しますが、このシグナルの相反する作用が関与しているのではと興味をひかれました。