日本骨代謝学会

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ASBMR 2023 レポート
野添 彬(大阪大学大学院 歯学研究科 口腔外科学第一)

2023年10月13~16日の間、カナダのバンクーバーで開催されたASBMR Annual Meetingに参加しました。私自身海外での発表が初めてでしたが、Plenary Poster Sessionに採用されることになり大変緊張した状態で学会に参加しました。

私は ”Evidence of Reduced Dentin Sialophophoprotein Expression and Impaired Cell Process Formation in Odontoblasts in Patients with Hypophosphatasia” という演題で発表させていただきました。テーマが象牙芽細胞ということもあり、今回歯に関する発表をされた2演題についてご紹介いたします。

紹介演題 [1]
The Effects of Nfi-C Tissue-Specific Deletion on Ameloblasts Differentiation

キーワード

エナメル芽細胞

研究グループ

Si Hyoung Ki¹, Hyun-sook Bae², Joo-Cheol Park¹

  • 1. Laboratory for the study of Regenerative Dental Medicine, Department of Oral Histology and Developmental Biology, Dental Research Institute and School of Dentistry, Seoul National University, Seoul, Korea
サマリー&コメント

げっ歯類の切歯は一生を通じて成長し続ける。この成長は、歯の形成過程における上皮間葉の複雑な相互作用によってなされる。The Nuclear factor I (NFI)ファミリーは4つの遺伝子(NFI-A、NFI-B、NFI-C、NFI-X)から構成されている。先行研究によってNficノックアウト(KO)マウスは、臼歯根と切歯に欠損表現型を示すことがわかっている。そこでNficfl/fl、K14-Cre;Nficfl/-(Hemi)、K14-Cre;Nficfl/-(Homo)の表現型を比較し、Nficが介在する歯の形成メカニズムを明らかにすることを目的とした。上皮特異型Nfic KOマウスの表現型変化を調べるため、Cre-loxPシステムを用いてK14-Cre;Nficfl/-、K14-Cre;Nficfl/flマウスを作製した。組織学的解析は顕微鏡を用いて行った。1ヶ月齢のK14-Cre;Nficfl/-マウスおよびK14-Cre;Nficfl/flマウスでは、象牙質を含む歯牙の形態形成変化は認められなかった。しかし、6ヶ月齢のK14-Cre;Nficfl/-マウスおよびK14-Cre;Nficfl/flマウスでは、それぞれNficfl/flマウスに比べて切歯歯髄腔が狭くなっていた。K14-Cre;Nficfl/-マウスの成熟エナメル芽細胞はNficfl/flマウスと比較して極性を失い、K14-Cre;Nficfl/flマウスの成熟エナメル芽細胞は扁平な形状を示した。象牙芽細胞の分化に非常に重要なエナメル芽細胞の形態を知ることは、歯冠形成のメカニズムを解明することに有用であると考えられる。

紹介演題 [2]
Selcopintide assists the elongation of PDL fibroblasts by altering microtubule with TAU

キーワード

歯根膜、細胞突起

研究グループ

Eunhoo Park et and Joo-cheol Park

  • 1. Laboratory for the study of Regenerative Dental Medicine, Department of Oral Histology and Developmental Biology, Dental Research Institute and School of Dentistry, Seoul National University
サマリー&コメント

歯根膜(PDL)は歯と歯槽骨を結合させるために非常に重要である。PDLは咀嚼によって生じる引張り、圧縮、せん断力などの機械的ストレスに耐えられなければならない。PDLは歯根膜線維芽細胞によって形成される。歯根膜線維芽細胞はコラーゲンの分泌だけでなく、自ら伸長し直接的にPDL形成に寄与している。そこでヒトのPDL線維芽細胞において微小管の制御に関わるTAUが、Selcopintideによってどのような動態を示すのか検討した。SelcopintideがTAUを介した微小管の変化を検討するために、ヒトのPDL線維芽細胞をLive cell imagingとlaser scanning microscopyを用いてその細胞形態の変化と細胞骨格の構造を観察した。Live cell imagingによって観察されたSelcopintideを添加したヒト由来PDL線維芽細胞細胞では、経時的な細胞突起の伸長が確認された。対照にsiTAUをトランスフェクションしたPDL線維芽細胞では細胞突起の伸長は見られなかった。laser scanning microscopyを用いて観察されたPDL線維芽細胞は、Live cell imagingによって観察された細胞と同様に細胞突起の伸長を認めた。siTAUをトランスフェクションしたPDL線維芽細胞では微小管とアクチンフィラメントの伸長はなく、その数が増加するだけであった。さらに伸長された細胞突起の長さを計測すると、Selcopintideを添加したPDL線維芽細胞群で最も長くなった。

会場近くにあるCACTUS CLUB CAFEで指導いただいた先生方と食事をしました。