日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨サミット

TOP > 骨サミット > 2016年(基礎系)

基礎系 2016年座談会
骨・運動器領域の基礎研究の国内外の動向

司会
高橋直之 先生(松本歯科大学総合歯科医学研究所 所長)

座談会メンバー
網塚憲生 先生(北海道大学大学院歯学研究科硬組織発生生物学教室 教授)
高柳 広 先生(東京大学大学院医学系研究科免疫学 教授)
竹田 秀 先生(せいせき内科 院長)
西村理行 先生(大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座生化学教室 教授)

破骨細胞と骨免疫学について

高橋それでは次に、高柳先生からお話をうかがいます。

高柳以前は破骨細胞に関しては、破骨細胞のなかでのシグナル伝達、RANKLにより破骨細胞がどうやって形成されるかが注目されていました。しかしながら、破骨細胞由来のPDGF-BBが血管系を制御することで骨形成を制御する、あるいは肝臓で分泌されるIGFBP1が破骨細胞を制御し、そこにFGF21が関与するといった、肝臓由来の成長因子が破骨細胞を制御するという報告が出てきたことで、破骨細胞に関しても他臓器との相互作用が指摘されるようになってきています。
破骨細胞の制御に関しても、分子生物学的な研究手法の進歩に応じて、mi-RNAによる破骨細胞分化の制御や、エピジェネティックな制御による破骨細胞分化の制御、DNAのメチルトランスフェレースの制御など、新しい制御因子がどんどん出てきています。
破骨細胞の制御に関しても、分子生物学的な研究手法の進歩に応じて、mi-RNAによる破骨細胞分化の制御や、エピジェネティックな制御による破骨細胞分化の制御、DNAのメチルトランスフェレースの制御など、新しい制御因子がどんどん出てきています。
さらに新しいトピックとしては、RANK非依存性のRANKLの作用やRANKL非依存性の破骨細胞形成が注目されています。以前からRANKL非依存性の破骨細胞形成については報告されていましたが、in vivoのエビデンスがないなかで、2015年にloxがRANKLなく破骨細胞を造りだし、特にがん転移時にloxが放出されることが重要であると報告されて、われわれも注目しているところです。
RANKLがなくとも破骨細胞ができるとする論文はほとんどがin vitroで、しかもノックアウトマウスは使わずに示していることが多く、やはりin vivoでは破骨細胞の形成にRANKLは欠かせないという点は崩れないと思います。ただ、RANKLに他の受容体があればRANKL非依存性も成立する可能性があり、今後の行方を興味深く見守っていきたいところです。
骨免疫関連ではリウマチの病態に関して新しい発見がありました。感染防御において免疫複合体が重要ですが、ホストディフェンス以外の作用がほとんど知られていないなかで、免疫複合体による破骨細胞への直接作用が明らかとなってきたのは大きなトピックです。
われわれとしては、リウマチにおけるRANKLのソースがT細胞か滑膜線維芽細胞なのかが大きな関心事であったわけですが、最近になってよいCreマウスが登場したことで、後者が重要と言えるようになりました。
また、今日の骨免疫のシンポジウムでも、造血幹細胞ニッチにおける骨の細胞の関与について、かつて華々しく登場した骨芽細胞の位置付けが縮小傾向にあるなかで、骨の研究者が見ている骨芽細胞の定義が、ニッチの研究者と共有できているのかを疑問に感じました。Osterixがかなり幼若な細胞でも出ているのはオステオコンドロプロジェニターと捉えることができますが、オステオカルシンが出ていると言われると、骨芽細胞の研究者にとっては非常にショッキングなことです。Creマウスの特異性で問題がある点と、骨芽細胞特異的遺伝子の発現はもう少し切り分けていくべきで、この混乱を解決していくことも課題の1つと感じています。

高柳広先生
高柳広先生

高柳そして、新たにRANKLの発がんとのかかわりが相次いで報告されていますので、RANKLを阻害することで、骨転移だけでなく発症そのものも抑制可能となれば、非常に興味深い展開となります。
さらに、IL-17もこれまで骨吸収制御一辺倒で来ていましたが、骨形成に対する制御がポジティブあるいはネガティブと多様なシチュエーションがあることがわかり、骨形成にも積極的に関与している可能性は十分にあり得ます。われわれは、骨折治療におけるIL-17の役割を報告していますが、全身炎症におけるIL-17は骨形成を抑制するといった報告5)もあり、ターゲット細胞や、慢性的なのか時期を限って出るかの違いによって作用も異なると考えられます。

高橋ありがとうございました。高柳先生たちが報告された免疫複合体の論文6)には深い感銘を受けました。さまざまな手法を用いて免疫複合体が破骨細胞の分化と機能を調節するという知見は、骨免疫学の1つの到達点を示したものであると思いました。また、T細胞が分泌するIL-17が骨形成を調節するという知見や、骨芽細胞と造血の関係、RANKLと発癌の関係など、新しい知見が次々と報告されていることがわかりました。

  • 5) Korn T, Bettelli E, Oukka M, et al. IL-17 and Th17 Cells. Annu Rev Immunol. 2009; 27: 485-517.
  • 6) Negishi-Koga T, Gober HJ, Sumiya E, et al. Immune complexes regulate bone metabolism through FcRγ signalling. Nat Commun. 2015; 6: 6637.
Page 3/5