日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨サミット

TOP > 骨サミット > 2016年(基礎系)

基礎系 2016年座談会
骨・運動器領域の基礎研究の国内外の動向

司会
高橋直之 先生(松本歯科大学総合歯科医学研究所 所長)

座談会メンバー
網塚憲生 先生(北海道大学大学院歯学研究科硬組織発生生物学教室 教授)
高柳 広 先生(東京大学大学院医学系研究科免疫学 教授)
竹田 秀 先生(せいせき内科 院長)
西村理行 先生(大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座生化学教室 教授)

今後の展望

高橋それでは最後に各々の先生方から今後の研究の方向性について、紹介していただきます。それを読んだ若手研究者が関心を抱くようなメッセージを期待しております。それでは、西村先生から、お一人ずつお願いいたします。

高橋先生
高橋先生

西村私は臨床から基礎研究に転向して長くなりますが、これまでに培った研究成果をそろそろ実臨床に役立たせることが課題だと思っています。Wntシグナルに着目したのも、抗SOST抗体の登場が示すように、OAは当然ながら関節リウマチなど様々な病態に関与していますし、やはりWntシグナル経路の活性を調節することによる治療戦略を実現したいと思います。
もう1つ、骨粗鬆症も関節リウマチも治療薬の開発が進みましたが、OAについても、人工関節を用いている整形外科医からもやはり創薬のニーズがあるという声を耳にします。あと10年をめどとしてOAの創薬を目標に掲げ、それも成長軟骨ではなく関節軟骨をキャラクタライゼーションした、真の再生を目指したいと思っています。

竹田本日、私は骨と神経系、他臓器の相互作用について話しましたが、骨の研究の対象は、骨だけに止められなくなってきていることを実感します。ですから、これから骨を研究する若い研究者には、「木を見て森を見ず」ではないですけれども、骨を見て体を見ずになることは避けてほしいと思います。高柳先生らは、全身の代謝の向上性における骨の位置づけという概念でオステオネットワークという言葉を提唱されていますが、そういう概念にもとづく研究が、今後この領域をさらに発展させる1つの鍵になると思っています。

西村先生・竹田先生
西村先生・竹田先生

高柳脊椎動物は、骨でキャラクタライズされる生物です。それなのに、従来の骨の位置づけは、単に生体を支持し運動を可能とする硬組織としての認識に止まっていました。骨を司令塔として他臓器を制御するというオステオネットワークの観点はまだ未解明のことが多いですが、われわれ脊椎動物が持つ生体高次機能の制御システムを新たな視点から理解し、将来の治療法開発に役立つ知見を得る上で非常に重要な方向性になると思っています。
ただ、自分が研究を始めた初め頃を振り返ると、破骨細胞がfusionして形成されていくのを見るのが楽しかった記憶があります。今、いろいろな研究手法が進んでいますが、あえてそういう素朴なところに立ち返り応用していくことで 、両極端ですがオステオネットワークとは異なるアプローチを可能とすることも1つの大事な方向だと思います。
また、アンメット・メディカル・ニーズの観点では、今後臨床的にはますますOAが重要視されてくると思います。さらに、最近のがんの免疫療法では、一部の人でPD-1抗体が非常によく効き、免疫を制御して腫瘍に取り込めることが明確になってきているが、骨転移は恐らく他の部位と異なるシステムがあると考えられます。そうすると、われわれ骨代謝領域の研究者にとっても、予後の悪いがんの骨転移の特殊性を研究していくことで、おのずと腫瘍への取り組みも開けてくると期待しているところです。

網塚骨の研究ではオステオネットワークや軟骨・骨の発生を含めて、非常に多岐に渡る現象が解明されてきましたし、以前、脇役だった神経や血管、免疫系細胞が重要な役割を担うことも明らかにされてきた点で大きな進歩があったと思います。その一方で私は、やはり、生体のなかでどういう細胞がどのような役割や振る舞いをしているのかきちんと観察していくこと、そして、骨の形態と機能をしっかり対比させて検討を進めていくことが、真実を知る上で重要と考えています。

高柳先生・網塚先生
高柳先生・網塚先生

高橋ありがとうございました。
本日は「骨・運動器領域の基礎研究の国内外の動向」をテーマに、各々の先生方から各領域でホットなトピックスと今後の研究について紹介していただきました。この座談会より、わが国の骨代謝の基礎研究が臨床に深く貢献していることを強く感じました。本日の座談会が、若手研究者にとって骨代謝研究を目指す契機となり、骨代謝の研究がさらに発展することを期待して、この座談会を終わりにしたいと思います。本日はありがとうございました。

先生方

Page 5/5