日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

骨サミット

TOP > 骨サミット > 2016年(臨床系)

臨床系 2016年座談会
骨ミネラル代謝研究・臨床における国内外の動向

司会
田中 栄 先生(東京大学大学院医学系研究科感覚・運動機能医学講座整形外科学 教授)

座談会メンバー
大薗恵一 先生(大阪大学大学院医学系研究科小児科学 教授)
宗圓 聰 先生(近畿大学医学部奈良病院整形外科・リウマチ科 教授)
福本誠二 先生(徳島大学藤井節郎記念医科学センター脂溶性ビタミン研究分野 特任教授)

カルシウム・リン代謝について

田中それでは最後に福本先生、お願いします。

福本われわれが研究を始めた頃、先ほど大薗先生がおっしゃっていた厚生労働省斑会議の活動として、偽性副甲状腺機能低下症の診断基準やPTH負荷試験であるエルスワース・ハワード試験の判定基準の作成を行っていました。偽性副甲状腺機能低下症という特殊な、稀な病気について明確な診断基準の作成や病態の解明、PTH分泌不全によるものも含めた副甲状腺機能低下症の治療指針の作成・公表がなされているというのは、諸外国では見られないことだと思います。
また、最近ではカルシウム・リン代謝に関して新たな治療薬がいくつか出てきています。わが国ではまだ使われていませんが、PTH(1-84)が副甲状腺機能低下症、PTH分泌不全による疾患に対して米国で使えるようになりました。日本ではPTH(1-34)であるテリパラチドが骨粗鬆症に使われているのですが、PTH(1-84)の方が半減期が長く、血中カルシウム濃度を維持しやすいことから、副甲状腺機能低下症に対してはPTH(1-34)ではなくPTH(1-84)が認可されました。

福本誠二先生
福本誠二先生

福本それから、原発性副甲状腺機能亢進症に対してもわが国でシナカルセトが保険適応になりました。今までは透析中の二次性副甲状腺機能亢進症のみが適応でしたが、高カルシウム血症を示すような疾患に対しても使用できるようになったことは、大きな変化だと言えます。また、高リン血症に対する薬剤も昨今ではカルシウム非含有のリン吸着薬が主流となり、かつ種類も増えてきています(炭酸ランタン、クエン酸第二鉄、スクロオキシ水酸化鉄、ビキサロマー、セベラマーなど)。これらの薬剤の一部は保存期の慢性腎臓病(CKD)患者さんに対しても使えるようになっていますので、高リン血症に対する治療は大いに進歩していると思います。
特に腎臓の分野においては、腎機能悪化の進行を直接止める薬というのはほとんどありません。一方、CKDに伴う骨ミネラル代謝異常に対する薬というのは増えていますので、この分野での臨床上の進歩は著しいと思います。
また、先ほど話に出たFGF23は、2000~2001年にかけて3つのグループがほぼ同時にクローニングした、骨により産生されるリン利尿ホルモンです。このFGF23の発見により、骨が内分泌臓器であることが明らかにされてきました。さらにこの15年ほどで、X染色体優性低リン血症性くる病(XLH)や、その他10種類近くの低リン血症性疾患が、FGF23の過剰な活性によって起こることが明らかにされてきています。また、まだ保険適応になってはいませんが、血中のFGF23の測定系も既に確立されています。
FGF23の作用を阻害する方法が現在開発されつつあり、先ほどのXLHや、腫瘍性骨軟化症という低リン血症性疾患に対するヒト型抗FGF23抗体の臨床試験が現在進行中です。

田中FGF23に関して言えば、骨細胞(osteocyte)がFGF23の産生細胞だというのは、おそらく誰も想像していなかったと思います。その後、スクレロスチンなども発見され、osteocyte研究は今1つのブームになっていますね。

福本OsteocyteがなぜFGF23をつくらなければならないのか、その理由は未だによくわかりません。

田中それまでに、XLHと腫瘍性骨軟化症(TIO)とが何らかのつながりがあるというのは言われていたのですか。

福本病態の類似性は指摘されていましたが、これらの疾患が全く同じ物質によって起こるという証拠はありませんでした。ただ、XLHも液性因子によって起こるということはいくつかの検討で判明していました。

大薗XLHの原因遺伝子が1995年頃に特定されたのですが、酵素であって、分泌蛋白ではなかったため、FGF23とのつながりは5年ほど不明のままでしたね。

田中FGF23の抗体については、現在、日本でも治験が行われていますし、将来的にも大いに展望があるように思います。
さて、少し遡った話になりますが、東京大学第四内科がその研究を牽引してこられた副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)についても、伺えますでしょうか。

福本ご存じのように、PTHrPというのは、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症のなかの、humoral hypercalcemia of malignancyの原因物質として、米国と豪州の3つのグループが同定したものです。われわれのグループも固形腫瘍ではなく、成人T細胞白血病(ATL)細胞がPTH活性を持つ物質をつくるということは見出していました。当時は大量の培養液からこの蛋白を同定しようとしていたものの、技術が及ばず、同定までには至りませんでした。
PTHrPの同定後、PTHとPTHrPはおそらく共通の遺伝子から分かれたものだろうということもわかりましたし、これらの物質の共通の受容体としてPTH1受容体、いわゆるPTH/PTHrP受容体が同定、クローニングされたという経緯があります。

田中PTHrPについては、それ自身ではなく、誘導体のようなものが骨粗鬆症の薬として現在開発されていますよね。

宗圓Abaloparatideですね。現時点で臨床の成績が出ているなかでは、最も効果が高い薬だと思います。1年の試験で、テリパラチドと大きく異なるのは、大腿骨近位部の骨密度がきわめて大きく増加する点です。通常、テリパラチドで腰椎では増加しますが、大腿骨近位部ではそこまで増加はしません。抗スクレロスチン抗体でも同様で、1年使うと腰椎で十数%増加しますが、大腿骨近位部では数%程度です。ところが、このabaloparatideは1年で大腿骨近位部で9%近く増加します。使用期間に関しては、1年半ということで現在、検討がなされているようです。

Page 3/4