日本骨代謝学会

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臨床系 2017年座談会
骨ミネラル代謝研究・臨床における国内外の動向

司会
田中良哉 先生(産業医科大学医学部第1内科学講座 教授)

座談会メンバー
伊東昌子 先生(長崎大学病院 副学長 / ダイバーシティ推進センター長)
遠藤直人 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座 整形外科学分野 教授)
杉本利嗣 先生(島根大学医学部内科学講座内科学第一 教授)

画像や検査に関するトピックス

田中杉本先生,内科疾患と続発性骨粗鬆症あるいは骨ミネラル代謝異常症における画像や検査に関して最近のトピックスは他にございますか。

杉本続発性骨粗鬆症をきたす疾患として,生活習慣病,リウマチ,内分泌疾患が非常に重要です。特に内分泌疾患では古典的にクッシング症候群,甲状腺機能亢進症,性腺機能低下などがあげられていますが,最近では原発性アルドステロン症や褐色細胞腫でも骨折リスクが上昇することが報告され,注目されてきています。また,軽症の原発性副甲状腺機能亢進症,サブクリニカルクッシング症候群,潜在性甲状腺機能亢進症でも骨脆弱化をきたしやすいことが明らかになってきています。さらに,副甲状腺機能低下症,成長ホルモン分泌不全症といったホルモン分泌の低下症でも,骨折リスクが高いことが注目されています。

田中今後は,骨量だけではなく骨質の評価も重要になってくると考えられます。伊東先生はHR-pQCT(High Resolution peripheral Quantitative CT)を積極的に用いられていますが,骨量や骨質の評価についてはいかがでしょうか。

伊東HR-pQCTは海外では2000年代に開始されましたが,日本にはかなり遅れて導入されました。CTの利点として,3次元的解析が可能ですので海綿骨と皮質骨に分けて評価でき,両者への作用メカニズムを知った病態解明にも役立つと期待しています。
骨折リスクで,海綿骨と皮質骨がそれぞれどのように関与しているかは大きな課題です。かつては海綿骨を中心に評価していましたが,HR-pQCTが出る頃からそれまで大きな動きがないと考えられていた皮質骨は実はダイナミックに動いており,薬物の効果の出方も海綿骨とは異なることがわかってきています。ですから,疾患や病態によってどの薬剤がよい適応になるかも検討できるのではないかと思っています。
また2型糖尿病では,骨密度が減少していないのに骨折リスクが高い場合は,cortical porosityがかなり進行しているというデータが出ていますし,一方cortical porosityに変化がなく材質の問題だという報告もあります。まだ混沌としていますが,解析ツールとしてのHR-pQCTが登場したことは一つの突破口になったのではないかと思います。

伊東昌子先生
伊東昌子先生

杉本DXA装置にソフトを加えて算出される海綿骨スコア(TBS)や大腿骨強度評価(HSA)などで糖尿病の構造特性の劣化を示すデータも出てきています。

田中TBSは海綿骨の骨質評価に繋がると考えらえますか。

杉本そう言えると思います。

伊東DXAはもともと2次元データですが,2次元のミネラルの分布のテクスチャーは評価できますから,骨密度と独立した因子として骨折リスク予測に貢献するという論文が出てきています。

田中こうして見ると、ビタミンD研究の分野というのは、この半世紀での進展が大きいですね。活性型が見つかった1960年代から、随分と進歩してきたように思います。
ただ、個人的に気になっていることですが、血中25(OH)D3の測定が日本ではできない点が昔から指摘されていますが、ではそれが測定できればよいのかというと、そうでもない。最近では、他にも様々な病気で“25(OH)D3が低いこと”がリスクとなることもわかってきて、生体におけるビタミンDの役割というのが、逆に難しくなっている印象があります。

杉本糖尿病例ではHbA1cが7.5以上か未満かで分けると,7.5以上群ではTBSが有意に低いことが報告されています。

田中本日の第35回日本骨代謝学会総会でCharles A.O’Brien先生が,ステロイド性骨粗鬆症は脊椎骨折を発症することが多いものの,cortical porosityの変化がより強いとお話しされていました。内科的疾患では皮質骨と海綿骨のどちらの劣化が先に現れますか。

杉本古典的にはエストロゲン欠乏やステロイド性では海綿骨が劣化しやすく,副甲状腺機能亢進症は原発性,続発性のいずれも皮質骨が劣化しやすいといわれています。しかし,ステロイド性でもcortical porosityが増加することが示されており,これも骨強度の低下,骨折リスク上昇に大きくかかわっていると考えられます。

遠藤ステロイド性骨粗鬆症ではステロイド投与初期には骨吸収が亢進するため,おそらく皮質骨ではendostealに骨吸収されるのではないでしょうか。そのため,若年者にステロイドを使った場合は海綿骨も減りますが脊椎のエンドプレートの下の吸収が進むため,結果として脊椎骨折が多いのではないでしょうか。若年者では,大腿骨はまだ維持できる厚さを保っているため,大腿骨ではなく最初に脊椎の骨折が生じるのではないかと思います。

伊東HR-pQCTを用いてステロイド性骨粗鬆症においてcortical porosityが増加するというヒトのデータは出ています。杉本先生がおっしゃったように以前は原発性副甲状腺機能亢進症においては皮質骨に異常をきたす疾患と考えられていましたが,HR-pQCTを用いて海綿骨にも異常が認められたという報告も出てきています。
海綿骨微細構造の異常があり,cortical porosityがいずれかの段階で急増したときに骨折を起こすというデータも少しずつ蓄積されてきているようですから,両方をみることは意味があると考えます。

田中25(OH)D不足に伴う骨量低下,骨質悪化はHR-pQCTで検出できるのでしょうか。

伊東そのデータはおそらくまだグローバルにもないと思います。

遠藤血液中25(OH)D値は全体で見ると30ng/mLくらいからPTHが上昇し,いわゆるsecondary hyperparathyroidismの状況になって骨が減ると考えられます。しかし,個々の症例でみると25(OH)D値が低くてPTHが上がる例と,上がらない例があり,上がらない例のほうが骨折している方が多いです。なぜPTHが上がらない例で骨が脆いのか,知りたいところです。

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