日本骨代謝学会

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臨床系 2017年座談会
骨ミネラル代謝研究・臨床における国内外の動向

司会
田中良哉 先生(産業医科大学医学部第1内科学講座 教授)

座談会メンバー
伊東昌子 先生(長崎大学病院 副学長 / ダイバーシティ推進センター長)
遠藤直人 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座 整形外科学分野 教授)
杉本利嗣 先生(島根大学医学部内科学講座内科学第一 教授)

治療薬に関するトピックス

田中杉本先生,治療薬のトピックスは何かございますか。

杉本最近では骨粗鬆症治療薬として初めての分子標的薬デノスマブが2013年に,静注用ビスホスホネート製剤で月1回のイバンドロン酸が同じく2013年に,そして年1回のゾレドロン酸が2016年に登場しました。
最近,骨粗鬆症用薬の臨床評価方法に関するガイドラインが改定されました。これまでは閉経後骨粗鬆症例に対する有効性の成績が主であり,これにより骨粗鬆症全体の保険適応がとれていましたが,今後は閉経後,男性,ステロイド性のデータがそれぞれ求められていくようになってくると思います。現在いずれにも有効性が示されているのはビスホスホネート,デノスマブ,テリパラチド製剤です。またCancer treatment-induced bone lossや癌の骨転移に対してもデノスマブやビスホスホネート製剤の有効性が証明され,早期からの薬物治療の必要性が提唱されています。
ミネラル代謝異常については,カルシウム感知受容体作動薬シナカルセトが血液透析患者での二次性副甲状腺機能亢進や副甲状腺癌,副甲状腺摘出術不能な原発性副甲状腺機能亢進症または術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症に適応となっています。また続発性副甲状腺機能亢進に対して,2016年には静注製剤エテルカルセチドも承認されています。経口剤は消化器症状のため服薬コンプライアンスに若干の問題がありますが,静注製剤はコンプライアンスの点からも期待されています。

杉本利嗣先生
杉本利嗣先生

田中今後の治療の展望はいかがでしょうか。

杉本骨粗鬆症治療薬では,骨形成促進剤の抗スクレロスチン抗体ロモソズマブ,副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)誘導体アバロパラチドが注目されています。アバロパラチドは米国で承認され,わが国でも現在臨床試験中です。一方,骨質劣化をきたす内分泌疾患として先程挙げました副甲状腺機能低下症の治療薬は現在活性型ビタミンDですが,PTH(1-84)が米国で承認され,わが国でも早期に使えるようになることが待たれます。また,完全ヒト型抗FGF23抗体が,FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症,特にX染色体優性低リン血症性くる病・骨軟化症と腫瘍性骨軟化症に対する治療薬として期待され,米国ではブレークスルーセラピーとして認められています。

田中日本人では25(OH)Dが低い方が多いということでしたが,そういった方にはどのようにアプローチすればよいでしょうか。

遠藤25(OH)D値が低く,25(OH)D不足の改善のみを目指すのであれば,日光浴,食事,活性型でないnativeビタミンDが基本です。しかし,ビタミンD代謝が悪ければ,活性型ビタミンDで対応することも一つの方法ではないかと思います。
有害事象で問題になるのは非定型大腿骨骨折と顎骨壊死です。当初,非定型大腿骨骨折は骨形成も骨吸収も低下し骨代謝回転過剰抑制となったときにみられた骨折でした。その際にビスホスホネートが投与されていたことから,ビスホスホネートによる影響だろうと考えられました。日本整形外科学会が調査したところ,非定型大腿骨骨折の発生頻度は大腿骨近位部骨折200~250例に対し1例程度の割合でした。非定型大腿骨骨折症例でのビスホスホネートや骨吸収抑制剤の使用率は4~6割程度でした。非定型大腿骨骨折は通常の骨折治療ではなかなか癒合せず,難渋します。
一方,顎骨壊死については2016年にポジションペーパーが出されましたので,これについては歯科と医科の先生方が情報共有をして連携をとることが大切だと思います。

田中伊東先生,薬の効果を画像的に評価していくことも一つの課題だと思いますが,例えば皮質骨の骨質改善や骨量増加は,HR-pQCTで評価可能でしょうか。

伊東論文としては既に出ているのですが,HR-pQCTは高解像度といっても皮質骨多孔化をみるには限界があります。ボクセルサイズが82μmであれば,解像度は130μmですので,小さな孔はそのサイズより検出できないため,porosityの約4割しか検出できません。ただ,孔のサイズの拡大や孔の数の減少を捉えるという点でみれば,治療薬の効果を評価できるのではないかと思います。骨吸収抑制剤のビスホスホネートやデノスマブでは,cortical porosityが減少するというデータが出ていますし,endocorticalに吸収が抑えられて骨が増え,皮質骨の幅が厚くなることもわかります。逆にテリパラチドではporosityが増大してくる一方で,皮質骨の容積は保たれ強度は保持されていることも報告されているので,porosityだけではなくいろいろなファクターで骨の強度を評価することが大事だと考えています。

田中骨折のない骨粗鬆症の治療効果を数値や画像でみることができれば有難いですね。

伊東患者さんに画像として見せることができれば,説得力は数値以上にあると思います。

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